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【For the chefs, with the chefs ~トップシェフに聞くゴ・エ・ミヨにまつわる思い出~ vol.2】三國清三シェフ

フランス発祥のグルメガイド「ゴ・エ・ミヨ」。1972年、創刊当時のフランスは“ヌーヴェルキュイジーヌ”という潮流の真っただ中にあり、創刊者のアンリ・ゴとクリスチャン・ミヨはフランス料理界の一大ムーブメントを後押ししたことで、フランスグルメ界にその名を確立させました。時代が変わり、料理界も日々うごめき変化する中、現代日本で「ゴ・エ・ミヨ」が果たす役割は一体何でしょうか? トップシェフたちに、「ゴ・エ・ミヨ」にまつわる思い出やエピソードを伺いました。

第2回目は、前回に引き続きオテル・ドゥ・ミクニの三國清三シェフ。  
後編となる今回は、四ツ谷本店を中心に札幌から名古屋までの店舗の統括を手がける三國シェフの現在のご活躍や若手へのメッセージをお届けします。  

前編インタビュー記事はこちらから⇒https://jp.gaultmillau.com/news/forthechefs_withthechefs_vol1_mikunichef

ゴ・エ・ミヨジャポン編集部(以下、GMスタッフ): 三國シェフはここ四ツ谷をはじめ、全国の直営店・業務提携店の統括もされていますね。    

三國清三シェフ(以下、三國シェフ) ありがたいことに、四ツ谷は平日・週末問わず連日多くのお客様で賑わっています。ここの料理はわたし自身がすべて関わりますが、遠地にある店はそうはいきません。でも、探求できる力をもつ料理長がいるので、彼らにミクニの哲学をよく伝授し、任せています。  

GMスタッフ: 札幌、京都、清水、軽井沢、名古屋など、それぞれの地方の食材でミクニの料理が味わえるのが魅力ですね。 

三國シェフ: 現場のシェフには食材の産地まわりをしてもらい、その食材をもとにメニューを作ってもらっています。素材そのものを生かす、「キュイジーヌ・ナチュレル」の考え方ですね。最後にそれをわたしが確認します。

GMスタッフ: 2017年に弊誌「トランスミッション賞」を受けて頂いたように、三國シェフは日本のフランス料理界における後継育成の旗手でもあります。

三國シェフ: ここ10年はクラシックに回帰しています。先ほど少しお話したとおり(前編参照)、1970年代はフランス料理界においてクラシックとヌーヴェルの分かれ目だった時代で、わたしはその両方をヨーロッパから学んで日本に帰ってきました。当時の日本のレストラン業界といえば、水は水道水だし、アミューズブーシュもアヴァンデセールも何もない状況です。だから、帰国当時のわたしの料理は前衛的だという評価の一方で、クラシックへの理解はどうなっているのか、など批判を受けることもありました。   

GMスタッフ: 今でこそ「フランス料理といえばコレ」と誰もが知っているスタイルも、三國シェフのような先駆者が試行錯誤しながら切り拓いてきたものなのですね。    

三國シェフ: でも、前衛だけでは人は育ちません。それに、答えのない状態で新しいものを創り出すには多大なるエネルギーを要します。若くてエネルギーのあるうちは挑戦したいことや伝統など、考えられることに全力で取り組むべきですが、それを一生続けていくことは難しいでしょう。先ほどお話ししたように、わたしが10年前にクラシックに回帰したのは、人を育てていくためでもあります。    


私が思うクラシックの良いところは、きちんと決まりごとがあり、
ルセットを通じて技術を伝えていくことが可能な点です。
特に日本の料理人には、ルセットの継承という方法は適していると思います
                          三國清三シェフ


GMチーフ:三國シェフにとって、10年というのが一つのサイクルの区切りなのですね。   

三國シェフ: そうですね。10年でひとつのモードが変化していくように感じています。前衛的なもの、新しいものがその輝きを保っていられるのは10年間。「エル・ブリ」のフェラン・アドリアがあの伝説の店を閉めたときの一言が忘れられません。  

GMスタッフ: どんな一言だったのですか?   

三國シェフ: 彼は「疲れた」と言ったのです。それは紛れもない事実でしょう。あれだけのことを10年間やり続けていれば、どんな料理人でも疲れるのです。時代は新しいもの、前衛的なものを求め、それを評価することでトレンドを意識させる部分があります。しかし、クラシックを理解していないと、発想力にもすぐ限界が来てしまうのではないかと思うのです。私が思うクラシックの良いところは、きちんと決まりごとがあり、ルセットを通じて技術を伝えていくことが可能な点です。特に日本の料理人には、ルセットの継承という方法は適していると思います。 

GMチーフ:新しい世代に伝え、残していくための「クラシック」ですね。ところで、 三國シェフは普段朝食にはどんなものを召し上がりますか?  

三國シェフ: 基本的には一汁三菜の朝食です。ごはん、鮭などの焼き魚、味噌汁、ホヤの塩辛などをいただきます。    

GMスタッフ:「毎日これは欠かせない」という食べ物はありますか?   

三國シェフ:刺身ですね。毎日食べています!  

GMスタッフ:最後に、若手料理人の方へのメッセージをお願いします。   

三國シェフ: 自分の料理を極めることも大切ですが、メゾンを続けていく、ということを考えてもらいたいと思っています。全速力で走り続けて疲れ果てたとしても、料理人の道はそこでおしまいではありません。クラシックには人を育てる力があります。クラシックを意識しながら人やメゾンを育て、新しいことに挑戦していくことは可能です。たとえば、先ほどお話ししたルセットの継承ですね。日本にはその力がある料理人が非常に多いと感じています。 

 GMチーフ&スタッフ:本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

(完)  

2019年4月5日 オテル・ドゥ・ミクニにて 
取材・撮影:ゴ・エ・ミヨジャポン編集部 
協力:株式会社ソシエテミクニ