忘れられないごちそう -5-

ジャーナリストであり作家のMatthieu Noli氏の「忘れられないごちそう」第5弾。今回の「ごちそう」は、有名な「三皇帝の晩餐」です。

  

1867年、万国博覧会が盛り上がり、産業においても成功をおさめ、銀行は繁栄、フランス皇帝はロッシーニによってこの万国博覧会のために作曲された『ナポレオン三世と勇敢な人々への賛歌』に酔いながら、これ見よがしに権力をひけらかしていました。


しかしながら、彼は6月7日、カフェ・アングレで行われた、ロシア皇帝アレクサンドル2世と、その息子で将来のアレクサンドル3世、プロイセン王ヴィルヘルム1世と相談役であるビスマルクが一同に会した「三皇帝の晩餐」には出席することはありませんでした。

 

皇帝たちには、アントナン・カレームの弟子である、アドルフ・デュグレレによるごちそうが振る舞われました。


より凝った料理へと移る前の準備として、最初は「皇后のポタージュ」(鶏のコンソメにタピオカでとろみをつけ、卵黄と鶏のクネルのクリームで仕上げたもの)で始まります。


続く前菜には、王妃のスフレに、ヴェネツィア風舌平目、平目のグラタンに羊の鞍下肉、鶏肉のポルトガル風、ウズラの熱いパテ、パリ風オマール海老、そしてシャンパーニュのソルベ。

仔鴨のルーアン風、ズアオホオジロのロティがのったカナペが供されると、最後はスペイン風のナスとアスパラガスで締められました。

 

この8時間も続いた晩餐では、グラン・クリュも立て続けにグラスに注がれました。

1846年のマデイラ酒、1821年のシェリー酒、シャトー・イケム、シャトー・マルゴー、1847年のシャトー・ラトゥール、1848年のシャトー・ラフィット、そしてよく冷えたシャンパーニュ、ロデレール…

 

デザートとして出された「アイスクリーム爆弾」よりも印象的なのは、このシャンパーニュです。


暗殺を何よりも恐れていたロシア皇帝アレクサンドル2世は、メゾン・ロデレールに底が平ら(爆弾を隠すことがないよう)で、透明な(毒を入れた場合に跡がわかるように)ボトルのシャンパーニュを作らせたのです。これが後のロデレールのキュベ、「クリスタル」です。

 

プロイセンの2人はというと、葉巻をくゆらしながら、良い場所を見つけたのです。

そう、その3年後、普仏戦争で彼らはパリを包囲したのですから。

そして同時にナポレオン3世は、セダンの戦いで屈辱的な敗北をし、力を誇示することもなくなるのでした…



by Matthieu Noli