【INTERVIEW】「サンパウ」カルメ・ルスカイェーダシェフ

~カルメシェフと赤木シェフに聞く「サンパウ」のこれまでとこれから~

2019年4月「レストラン サンパウ」が千代田区平河町へ移転オープンしました。 
1988年にシェフの故郷、スペインはカタルーニャのサン・ポル・デ・マルでスタートし、2004年3月に東京・日本橋に東京店がオープンしてから15年。
新たなステージへと踏み出した「サンパウ」について、来日したカルメ・ルスカイェーダシェフにお話を伺いました。

 

 

ゴ・エ・ミヨジャポン編集部(以下GM) 本日はお忙しい中ありがとうございます。このたびは「サンパウ」東京店リニューアル、おめでとうございます!30周年を節目にスペインの本店を閉められ、レストランとしての「サンパウ」はここ東京を舞台に新たなスタートを切ることになりました。    

 カルメ・ルスカイェーダシェフ(以下カルメシェフ): ここ東京店はスペインの本店の続きだと考えています。カタルーニャと日本は地理的には離れていますが、わたしにはまるで兄弟のように感じられます。たとえば、四季を大切にするところや自然との料理との調和など……色々と共通するものがあるように感じます。日本の食材にはとても興味があり、毎年来日するたびに新たな発見があってワクワクします。東京に店を持てたことで、料理人として成長する機会をもらったような気がします。

GM: カルメシェフは、東京でレストランを経営する傍ら、バルセロナではテレビやラジオなどのメディア活動やマンダリンオリエンタルホテル内のレストランの統括などを手がけられています。ここ、ザ・キタノホテルの新店舗の印象はどうでしょうか?    

カルメシェフ: とても気に入っています。絵は前の店舗でも飾っていたカタルーニャの画家たちのもので、みなさんの知っている「サンパウ」らしい雰囲気を保ちつつ、ところどころに日本ならではの新しいエッセンスを加えています。バルセロナでは、メディア活動のほかに小・中学校への訪問活動も最近は多く行っています。自分の料理を作るだけでなく、教育に携わって食文化を次の世代につなげていくことも料理人の仕事ですから。

GM: そうした功績によって、先日 カタルーニャ政府から文化芸術に貢献した人に贈られる賞(Premis nacionals de cultura 2019)を受賞されていますね。   

カルメシェフ: これまでこの賞の受賞者は美術や音楽、建築などのアーティストばかりで、料理人としての受賞は初めてだったのです。料理がひとつの芸術として認められた、ということですね。わたし以前にも、料理に人生を捧げてきた名もなき料理人たちがたくさんいて、そして次の世代へと続きます。彼らの歩んできた軌跡を踏まえて、次に続く料理人たちにアーティストとして活躍する新たな扉を開けることができたことをとても嬉しく、誇りに思います。


”自分を信じなさい。自分の好きなことを見つけない。
そして自分の選んだ仕事を愛し、身を捧げなさい。”

                            カルメ・ルスカイェーダシェフ


GM: 多くのシェフたちが料理に身を投じてきた中で、まだまだ厨房では数少ない女性であるカルメシェフが新たな扉を開けました。このことについてどのように感じていらっしゃいますか? 

カルメシェフ: たしかに昔はレストランで働く料理人の仕事は体力仕事で、男性の仕事でした。でも今は技術も進化して、女性でも働きやすくなっています。実際、女性シェフは増えていて、たくさんの女性シェフがわたしにアドバイスを求めてきますよ。

GM: どんなアドバイスをされるのでしょうか? 

カルメシェフ: 自分を信じなさい。自分の好きなことを見つけない。そして自分の選んだ仕事を愛し、身を捧げなさい、と言うようにしています。自分の好きなことを仕事にすると、そのうち、それは“仕事”と思わなくなります。 そして毎日規則正しく、浮き沈みなく仕事をすること。食材にもお客様にも、そして自分自身にも嘘をつかないこと。信じて続けていれば、いつかきっと花が開きますよ。

GMチーフ:ずっと続けている習慣などはありますか?  

カルメシェフ: 一日の中で一番大切なのは朝の時間です!わたしは毎朝7時に必ず朝食をとるようにしています。自宅ダイニングの窓を開け放して、地中海の風景を眺めながら風を感じること。これが日課です。

GMチーフ:朝食にはどんなものを召し上がりますか?   

カルメシェフ: ヨーグルトとフルーツ、そしてファイバークッキー。あとはコーヒー。海を見ながら朝食をとった後、11時になったらほうじ茶をいれます。昔はコーヒー派だったけど、いまはお茶派になりました。カタルーニャには「テ・デ・ロカ(ロカティー:岩のお茶)」というハーブティーがありますが、日本に来て繊細なお茶に出会って、すっかり魅了されてしまいました!

GMチーフ:日本の食材で何か気になるものはありますか?   

カルメシェフ: 以前に来日した時に、クラゲを食べて衝撃を受けました。地中海ではクラゲを食べる習慣はないのに、日本ではみんな喜んで食べている。ところ変われば、食材に対する考え方も様々なのですね。その後の2009年に地中海でクラゲが大量発生して、漁師もみんなすごく困っていました。日本でクラゲを食べたことを思い出して、クラゲ料理はとても面白いアイディアだったので、スペインでも何か料理に使えないかと思ってキッチンで試してみました。クラゲを食することができるように、学者などと一緒に行政にも働きかけてみましたが、ここでは前例がないということで認められなくて……あれは残念でした!

GM:く、クラゲ…   


”日本ならではの食材で、日本人だからこそ表現できる
カタルーニャの伝統料理を作っていきたいと思います。”

                         赤木 渉シェフ


カルメシェフ: 日本に来るたびに色々な食材にチャレンジしていますが、日本の食材のことは赤木料理長がよく知っているので、相談に乗ってもらっています。    

GM:リニューアルに伴い、その準備も含めて1月末から赤木渉シェフが料理長に就任されました。   

カルメシェフ: 出会ってまだ数ヶ月ですが、プロとして素晴らしい仕事をする料理人だと思います。 日本の食材のことをよく知っているし、「サンパウ」の料理を東京で表現するにあたって、素晴らしいシェフと出会えました。 

GM:赤木シェフ、「サンパウ」の料理長として、どんな料理を手がけていきたいと考えていらっしゃいますか?   

赤木 渉シェフ: カルメのイメージやレシピを忠実に再現することを大切にしていきたいと考えています。日本ならではの食材で、日本人だからこそ表現できるカタルーニャの伝統料理を作っていきたいと思います。

GM:本日は貴重なお話をありがとうございました!  

GMチーフ:お茶が大好きというカルメシェフ、次回はぜひ5月の新茶の季節に日本へいらしてください。

(了)   

ザ・キタノホテル「サンパウ」新店舗にて。
左から:赤木 渉シェフ、カルメ・ルスカイェーダシェフ、息子のラウル・バラムシェフ

2019年4月3日 ザ・キタノホテル 東京「レストラン サンパウ」にて

取材 取材・撮影:ゴ・エ・ミヨジャポン編集部 
通訳:安井理恵 
協力:株式会社グラナダ