洋の調理技術を身に付けた日本人シェフが自らのアイデンティティをどんな形で表現するか。「タパス・モラキュラーバー」で腕を振るい、フランス、ノルウェー、デンマークなどで経験を積んだ赤木渉シェフが出した結論は、やはり日本の食材の追究だった。2017年8月、新橋「スブリム」が移転した後、そのまま山田栄一氏がオーナーとしてプロデュースする「コフク」。その料理は店名由来の大らかな「鼓腹撃壌」のイメージとは逆に繊細極まりないものだ。和歌山の稚鮎、三重の真鯵、熊本の馬肉…12品は全て日本各地から取り寄せたもの。稚鮎のフリットは石の上に盛りつけ、馬肉のタルタルも見せ方は北欧イノベーティブの趣きだが、柚子胡椒を効かせ柚子の花をあしらって味覚は和の世界。蝦夷鮑にだだちゃ豆の一皿は青々とした豆の香り、ソースには素揚げした豆の皮のクリスピー感を生かす細やかさ。デザートの北海道産ピュアホワイトではエスプーマの泡とポップコーンで玉蜀黍の食感の違いを楽しむ。日本の食材という方向は定まった。さて、これをどう発展させるか、楽しみな店が、また1軒、現れた。
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