8 席のみの店内に腰を下ろし、周りを見渡す。無駄な装飾や人工物などは一切目に入らない閑静でシックな造りだ。客が揃い、店主、宮川政明氏の挨拶を受けると、徐々に幕が上がり、客の表情に期待の色が浮かぶ。酒の注文を問われ好みの盃を選ぶと、いよいよ美食の開幕だ。まずは淡い口当たりの蒸し物から始まる。寒い時期には温かいものからという心遣いがありがたい。早くもカウンターのいたるところで吐息が漏れる。店のスペシャリテとも言える「蝦夷アワビ肝ソース」が供されると口福に満ち、客の吐息は感嘆の声に変わる。酢飯は赤酢で、粒感が優しく感じられる炊き加減。丁寧に手仕事された種との口当たり、味の調和、双方の相性を考え抜いて仕上げてある。上質な余韻がいつまでも残る握りである。山葵をこまめにすり、車海老を食する直前にボイルするなど、ひとつひとつの仕事に対する誠実さ、妥協のなさも力強い。2 時間という時のなか、寿司と客のみに気持ちを向け、集中力を切らさない宮川氏。全ての客が居心地良く感じるように、気配りの目線は鋭いが、物腰の柔らかさには定評がある。技ともてなしが一体化した心の込もった名店である。
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